2021/04/01 18:00

スザニとは「針で刺繍されたもの」という意味。
色調やデザインは地方によって様々ですが、その名の通り、木綿やシルク、化学繊維の布に細微にわたり手刺繍が施された手刺繍布です。


壁飾りや寝具のカバーとして利用されるスザニは、生活必需品であると同時に嫁入り道具でもあります。
結婚を控えた娘は、母親や親戚の女性たちと共に一針一針丹精を込めてスザニを作り上げます。
伝統がこれからも受け継がれるよう、家系が永遠に続くよう、そして新たに生まれる家族の幸せを願って…




スザニには未完成の部分が残っていることがあります。次の世代に受け継ぐよう、後に自分の娘に未完成の部分を縫ってもらうようにとあえて残すのだとか。
また、完璧なものを作ってしまうと嫉妬や邪視が災難をもたらすと信じられていることから、あえて下絵の部分を残したままで仕上げることもあります。
嫁入り道具にスザニを縫うという習慣は都会ではもうなくなってしまいましたが、スザニが出来る女性にオーダーしたり、ミシン刺繍のスザニを買う人もまだまだ多いようです。

地方の村では庭先で祖母・嫁・孫娘の3世代がそろって刺繍する光景に出会うこともあります。
「私たちが刺繍をしていると自分もやると言って、やり始めるとこうして一日中夢中になっているのよ。」
祖母や母の手元を覗き込みながらぎこちなげに刺繍をする孫娘と、孫娘を優しく見守りながら刺繍を教える祖母。
作業場のすぐ横にはテーブルが置かれています。彼女たちは疲れるとそこでお茶を飲み、食事をし、時には黙々と、時にはおしゃべりに花を咲かせながら作業を続けます。
「私たちが刺繍をしていると自分もやると言って、やり始めるとこうして一日中夢中になっているのよ。」
祖母や母の手元を覗き込みながらぎこちなげに刺繍をする孫娘と、孫娘を優しく見守りながら刺繍を教える祖母。
作業場のすぐ横にはテーブルが置かれています。彼女たちは疲れるとそこでお茶を飲み、食事をし、時には黙々と、時にはおしゃべりに花を咲かせながら作業を続けます。

大家族で、人間関係が濃密。子供たちは大人を見て育ち、暮らしの中にあるスザニの伝統はさりげなく、そして着実に受け継がれてゆく。
時代も生活様式も様変わりし、スザニには商品、美術品として高値がつけられるようになりましたが、お金には決して換えられないスザニ本来の価値は、彼女たちがこんな風に一針一針刺繍をする日々の暮らしの中にあるのかもしれません。
その鮮やかな色彩と刺繍模様の素朴さ、美しさには、時を超えて連綿と息づく中央アジアの人々の暮らしと伝統、そして誇りが縫い込まれているに違いありません。
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